eポートフォリオ活用は,社会構成主義的な教育観をベースに成り立っており,利用者の主役は学生で,教職員は影の主役となる.
唯一の有能なリーダーによってトップダウンで展開できるのは導入までで,それ以降の普及は現場の主役たちを中心にボトムアップ的に展開されなければ全く機能しない.導入と普及を一緒くたに考え議論してはいけないのである.
利用者が円滑で効果的に,eポートフォリオ活用行っていくための継続的な支援の提供が必須である.
一般的には,次の2つの支援が行われている.
しかし実際は,強制的に無理やり受け身の状態で取り組んでも長続きせず,ただこなすだけで学習は生起されないだけでなく,授業等への取り組み自体にネガティブな参加を促すことになり,上手くいかない.
利用者である学生と教職員に対し,長期的かつ継続的な地道な活用を視野に入れた内発的な動機づけを利用者にいかに与えることができるかが成否の鍵を握る.
要件②の達成を目指し,「eポートフォリオ活用の良さを知り,その一端を経験できるような機会」を提供する.
その際,参加することがゴールではなく,あくまでeポートフォリオを理解し今後活用していこうという内発的な動機づけを与えるための手段であることを忘れてはいけない.よって,講演形式の一方的なものだけでなく,それ自体が仲間同士(ピア)の協同による学び合いの機会になるとよい.
実践中の利用者をいかに動機づけ,サポートできるかが焦点となる.
相談窓口に関しては,利用者が主体的でなければ機能しない.講座や研修会の実施に関して,多くの機関では,学生がeポートフォリオを使ってくれないという理由から学生に対する支援を強化しようする傾向があるが,必ずしも有効ではない.むしろ支援を行う対象は,学生ではなく学生をサポートし適切な方向へと誘導するファシリテーター役である教員の方が相応しい.
次の図に示すように,チームでeポートフォリオを用いた授業や活動を実際にデザインし,自ら実施または参観を行った後,その実践について相互評価する事で実践的なスキルやノウハウを習得する,という一覧の研修が有効である.
従来から初等中等教育の教師間で行われていた授業研究の方法を取り入れたものであり,自らが実践者/学習者となり協同で行わることが特徴で,参加型のワークショップによる研修である.一連の研修が,形式知だけでなく暗黙知までをも習得できる学び合いの場となり,皆が教える側であり皆が学習者の側となる.これは真正な学習そのものである.
システムありきではない,「人」による継続的な支援が不可欠なのである.