1.2. 背景② 【学習・評価観のパラダイム変換】

 eポートフォリオ利用の広がりの背景には,教育観のパラダイム変換が大きく関係している(表1).


表1:教育観のパラダイム変換

 1960年頃には行動主義が,1970年頃には認知主義が全盛を誇っていた.その時代においては,絶対的な知識を伝達するための学習指導(学校化された学習)が求められ,学習の知識観は「知識は与えられるもの」であり,学習の主体は教師が中心,学習の傾向は暗記中心,評価方法は主に客観的能力判定法であるテストを用い,その結果のみを重視した.

 しかし,1980年頃の構成主義の台頭とともに絶対的な知識観が崩壊し,学習活動や課題等が現実的なものでなくてはならないという真正な学習が求められるようになった.この真正な学習では,必要な知識を収集・統合し適切な判断を下しながら課題解決を図る力が必要とされているが,この能力はテストだけで評価することは不可能であるため,学習プロセスを通した継続的な学習成果物や学習履歴データ等の記録(学習のエビデンス)を重視し,これらを用いて学習者のパフォーマンスを多面的に評価する真正な評価*1が併せて求められるようになった.また,学習の知識観は知識は一人ひとりが自ら構成するもの(構成主義),知識は社会的な営みの中で構成するもの(社会構成主義),学習の主体は学習者が中心,学習の傾向は経験による学習と変化してきた.

 以上の教育観のパラダイム変換を簡単にまとめると以下のようになる.


表2:教育観のパラダイム変換2

*1 新しい教育観(構成主義・社会構成主義)では,客観テストで測ることが出来る能力は限られているので,継続的なパフォーマンスを評価する(図1).


図1:学習評価の氷山モデル